
この記事を書いた人:さやか 元キャリアアドバイザー・現職人事
飲食チェーンの店長を4年経験したのち、人材会社でキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーとして3年間、転職者と企業採用の両面を担当。現在は人事として新卒・中途採用に携わる。※画像はイメージです
CA(キャリアアドバイザー)として働いていた頃、女性の転職相談も受けてきた。女性の転職では、エージェント選びでつまずくケースが少なくない。
よくあるのが、「産休・育休の話を真剣に聞いてもらえなかった」「ライフイベントを考慮した求人を出してほしいと言ったら、条件を下げることを勧められた」というケースだ。
働き方の希望を伝えたのに、担当者から「まずキャリアを優先したほうがいい」と返され、傷ついて転職活動を止めてしまう人もいる。担当者との相性は、転職の結果を大きく左右する。
エージェントは「使うか使わないか」ではなく、「どれを・どう使うか」で結果が180度変わる。女性の転職においてこの差は特に大きい。以下では、採用市場の実態から具体的なエージェント選びの基準、面接日程の調整術まで、現場で見てきたリアルをもとに語っていく。
女性の転職は採用市場のルールが根本的に違う
「男女関係なく実力で評価される時代でしょ?」——そう思っている人も多い。しかし現実の採用市場はもう少し複雑だ。
管理職に占める女性の割合は、民間企業ではまだ低い水準にとどまっている。これは採用担当者の意識の問題だけでなく、「女性はいずれ辞める・休む」という根強い先入観が企業側の選考基準に影響しているケースが依然としてある。
実際にエージェントとして企業の採用担当者と会話していると、「30代前半の女性は産休リスクがあるから慎重に」という発言を(表向きではなく)打ち合わせの場で聞くことがあった。法律的にアウトな発言だが、そういう企業は今も一定数存在する。
だからこそ、女性の転職では「内定を取れるかどうか」だけでなく「入ってから活躍できる環境かどうか」を見極める目線がより重要になる。男性の転職では「スキルと給与のマッチング」が主軸になることが多い。一方、女性の場合はそこに以下の軸が加わる。
- 育休・産休取得実績(取得”率”だけでなく”復帰率”)
取得率100%でも復帰後に閑職に回される企業は存在する。「復帰後の職種維持率」を企業に質問できるかどうかが、エージェントの質を見極める指標にもなる。 - 時短・フレックス制度の”実際の”利用状況
制度があっても使えないケースは多い。求人票に「時短勤務可」と書いてあっても、実際に申請している社員がゼロという職場もある。内部情報を持つエージェントかどうかが分かれ目になる。 - 女性管理職の割合と、その具体的なロールモデルの有無
数字だけでなく「実際に育児しながら管理職をやっている人がいるか」という具体例の有無で、企業文化の本質が見える。
もう一つ見落とされがちな点がある。女性の転職活動は「時期」の影響を男性より強く受けるという点だ。結婚・妊娠・育休復帰というライフイベントが転職のタイミングと重なることが多く、「今動くべきか待つべきか」という判断が必要になる。この判断をサポートできるエージェントかどうかが、結果に大きな差をもたらす。
エージェント選びで外してはいけない5つの基準
CA時代に感じていたのは、「とりあえず大手に登録すればいい」という認識が女性には特に裏目に出やすいということだ。大手エージェントは求人数は多いが、担当者の質や専門性はバラバラで、女性特有の事情に対応できる担当者に当たれるかどうかは運になる。
以下の5点を軸に選ぶと、失敗確率が下がる。
① 担当者を女性に変えられるかを確認する
ライフイベントの話、セクハラや職場の人間関係の話、給与交渉への苦手意識——これらを男性に話しにくいと感じる人は多い。登録後に「女性担当者を希望できますか?」と聞いて快く対応してくれるかどうか、それだけでそのエージェントの対応品質がわかる。担当変更に難色を示すエージェントは最初から外していい。
② 企業の内部情報(育休復帰率・時短利用実績)を答えられるか
「育休取得率は何%ですか?」と聞いたとき、求人票そのままの数字しか言えないエージェントは企業との関係が薄い。「この会社は育休後に9割以上の方が同じ部署に戻っています」「時短を実際に使っている社員が◯名います」という内部情報を答えられるエージェントは、企業と深く付き合っている証拠で信頼度が高い。
③ ライフイベントを理由に条件を下げることを勧めてこないか
「結婚を考えているなら、残業が少ない分年収が下がっても仕方ないですよ」という思考のエージェントは、あなたのキャリアを本気で考えていない。ライフイベントに対応しながら年収を維持・向上させた転職事例を持っているかどうか、具体的に聞いてみよう。
④ 面接日程を在職中に調整するサポートが手厚いか
在職中の転職活動では「平日昼に面接に行けない」問題が必ず発生する。土曜や夜間に面接を設定してくれる企業を紹介できるか、あるいは企業側と日程交渉を代行してくれるかは、サポートの質に直結する。「企業側への交渉はお任せください」と言い切れるエージェントかどうかを確認しよう。
⑤ 複数登録を許容・推奨してくれるか
「うちだけで大丈夫です」と言うエージェントほど怪しい。各エージェントが持つ非公開求人は異なるため、2〜3社に同時登録するのが効率的だ。それを正直に伝えてくれるエージェントは、長期的な信頼関係を重視している。
目的別に選ぶ|女性の転職に向いているエージェント
「女性向け」を謳うエージェントは増えているが、実態は様々だ。以下では目的別に分けて整理する。
ハイキャリア・年収500万以上を目指す女性向け
リクルートダイレクトスカウト
年収800万〜のハイクラス求人に強い。スカウト型のため在職中でも活動しやすく、「動いてみようかな」という段階から情報収集できる。女性の管理職・専門職転職での採用事例も多い。
doda(デューダ)
求人数・実績ともにトップクラスで、女性向けのキャリアアドバイザー指名制度がある。「女性活躍推進企業」に絞り込んだ求人検索ができる点が実用的。年収交渉の代行実績も豊富で、担当者の当たり外れはあるものの、外れた場合の担当変更依頼も通りやすい。
20代・第二新卒の女性向け
マイナビエージェント
20代への対応に特に力を入れており、担当者のサポートが丁寧という評価が多い。女性専任のチームがあり、育休・産休について相談しやすい雰囲気がある。中小・ベンチャー企業の求人が豊富で「大企業一択ではない」という人に向いている。
type女性の転職エージェント
担当者が全員女性という特徴があり、ライフイベントやプライベートな悩みを話しやすい環境として評価が高い。首都圏の求人が中心だが、女性が働きやすい企業の審査・選定に独自基準を設けている点が他と異なる。「産休後のポジションが変わらなかった社員が何名います」という具体情報を提供できるケースが多い。
ライフイベントを最優先に考えたい女性向け
パソナキャリア
女性の管理職・ワーキングマザー支援の実績が長く、育休復帰後の転職支援にも強い。求人企業に対して「女性活躍」の観点で独自のヒアリングを行っており、制度の実態把握が他より深い印象がある。年収帯は400万〜600万円台が中心。
CA的アドバイス:エージェントは1社に絞らず、異なるカテゴリから2〜3社同時登録するのが現実的に正解。エージェントごとに独自の非公開求人があるため、複数登録すると選択肢が広がる。担当者の相性を見ながら軸足を決めていけばいい。
在職中でもバレずに転職活動を進める現実的な方法
転職活動は、在職中に進めるのが基本だ。「今の仕事を続けながらの転職活動は無理」と最初から諦めている人も多いが、やり方次第で十分に両立できる。
最大のハードルは「平日昼間の面接」だ。これを乗り越えるためのアプローチは3つある。
① エージェントに「土日・夕方対応の企業」を指定して探してもらう
すべての企業が平日昼間に面接を固定しているわけではない。土曜日や平日18時以降に対応できる企業は一定数存在する。ただし、求人票にその情報は載っていないことが多く、エージェントが企業に交渉・確認できるかどうかが鍵になる。「在職中なので土曜か夜間での面接を希望しているが、企業側に交渉してもらえますか」と最初のヒアリングで伝え、その返答の質でエージェントの力量を測る。
② 有給を「転職活動用」として計画的に確保する
企業規模や業種にもよるが、書類選考通過〜内定までの平均的な面接回数は2〜4回だ。3社を同時並行で進めるとすると、最大12回の面接が発生しうる。月に1〜2日の有給を「活動日」として事前に確保しておくと、急な面接依頼にも対応しやすい。
「病院」「家の都合」という理由で個別に取るよりも、「月に1日の計画的な休暇」として事前に上司に伝えておく方が、かえって怪しまれにくいという現場の経験則がある。
③ オンライン面接を積極的に使う
コロナ禍以降、1次面接をオンラインで行う企業が大幅に増えた。今では、選考の一部をオンラインで行う企業は珍しくない。ランチ休憩中にスマートフォンで参加、会議室の空き時間を使って参加、という形が現実的に取れる選択肢になっている。エージェントに「可能な限りオンライン対応の企業を優先してほしい」と伝えることも一つの戦略だ。
注意点:スーツや私服で転職活動していることを職場に悟られないよう、面接当日の服装は通勤途中やカフェで着替えるという手も有効。「転職活動をしていること自体が会社にバレる」という事態は、SNS投稿・友人への話漏れ・エージェントの企業DBへの入力ミスなどから起きることが多く、エージェントに「現職への連絡を絶対にしないでほしい」と明確に伝えておくことが防衛策になる。
結婚・妊娠・育休復帰、転職のタイミングはどう考えるべきか
「妊娠を考えているが、転職と妊娠どちらを先にすべきか」——これは女性の転職でよく出てくる悩みのひとつだ。
結論から言うと、「絶対的な正解はなく、個人の状況によって最適解が変わる」というのが正直なところだ。ただし、知っておくべき基本的なルールと現実がある。
結婚前後の転職
結婚そのものは転職活動においてほぼ影響しない。企業が「結婚するか否か」を選考基準に使うことは法律で禁止されており、実態としても面接での質問は減っている。ただし「苗字が変わる予定」「引っ越しの可能性がある」といった事情は、入社時期との兼ね合いで確認が必要なことがある。
転職活動の観点からは、結婚前後どちらでも問題ない。強いて言えば、結婚後の方が「引っ越しに伴う通勤問題」を事前に解決できる場合は早く動く方が合理的だ。
妊娠を考えている場合の転職
産休・育休の給付金(出産手当金・育児休業給付金)には受給条件がある。育児休業給付金は雇用保険に12ヶ月以上加入していることが基本条件だ。転職後すぐに妊娠した場合、給付金がもらえないか金額が減るリスクがある。
そのため「近い将来妊娠を希望している」という場合、現職にいながら妊娠・産休・育休を経験してから転職するか、転職先で1年以上勤務してから妊娠するかという選択になる。エージェントにこの状況を正直に話すことで、「入社後すぐに産休を取ることに理解がある企業」を探してもらえる場合もある(絶対ではないが、相談する価値は十分にある)。
育休から復帰した後の転職
育休から復帰した直後は、働き方がまだ安定していないことが多い。時短勤務などの働き方が落ち着き、自分がどの程度の業務量をこなせるかが見えてから動く方が、転職先に求める条件を正確に伝えられる。
エージェントには、勤務時間や在宅勤務などの希望を最初にはっきり伝えよう。条件を曖昧にしたまま進めると、入社後に「こんなはずではなかった」というミスマッチが起きやすい。
📌 この記事のまとめ
- 女性の転職は、ライフイベントや働き方の制度まで含めて求人を見極める必要がある
- エージェントは女性の転職支援の実績と、働き方の希望を正直に相談できるかで選ぶ
- 妊娠を考えている場合は、育児休業給付金の受給条件(雇用保険の加入期間)を確かめてから時期を決める
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