
この記事を書いた人:さやか 元キャリアアドバイザー・現職人事
飲食チェーンの店長を4年経験したのち、人材会社でキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーとして3年間、転職者と企業採用の両面を担当。現在は人事として新卒・中途採用に携わる。※画像はイメージです
キャリアアドバイザーとして働いていた頃、私は月に20名ほどの求職者を担当していました。20〜30代が中心で、特に多かったのがエンジニアの方です。現在は人事として、採用する側で年収を決める場面にも立ち会っています。
その両方の経験から言えるのは、年収交渉がうまくいくかどうかは、交渉のテクニックより先に「面接でどれだけ高く評価されたか」と「他社と競り合っているか」でほぼ決まるということです。企業が「この人をどうしても採りたい」と思っていて、しかも他社にも取られそうな状況なら、提示額は上がりやすくなります。逆に、評価がそこそこで他に選択肢がない状況では、どれだけ言い方を工夫しても大きくは動きません。
もうひとつ、希望年収や働き方の条件が相場より高すぎると、紹介できる求人が限られ、エージェントから見ても支援が進めにくくなります。希望を伝えることは大切ですが、根拠のある希望額を、正しいタイミングで伝えることが結果を分けます。この記事では、年収交渉の考え方と具体的な進め方を解説します。
この記事でわかること:年収が上がる・下がる転職の違い/交渉のベストタイミング/使えるセリフとNGセリフ/現職年収が低い場合の突破口
転職で年収が上がるケースと下がるケース——CAから見た冷酷な現実
「転職すれば年収が上がる」というのは半分正解で半分幻想です。転職で年収が上がる人もいれば、変わらない人、下がる人もいます。どちらになりやすいかは、スキルの需要、転職先の業界、ポジションによって大きく変わります。
年収が上がりやすいパターン:
✅ 需要が高いスキルを持っている——IT・DX・データサイエンス領域は2024年時点でも供給不足が続いており、経験を積んだエンジニアが、転職で年収を大きく上げる例は珍しくありません。市場原理が交渉を後押しします。
✅ 現職の給与水準が業界平均より低い——中小企業から大手・外資への転職、または非営利から営利企業への転職は、同じ仕事内容でも年収が100〜200万円変わることがあります。これは能力の差ではなく「器の差」です。
✅ ポジションが上がる(管理職・スペシャリスト登用)——「同じ職種・同じ会社規模」で転職するだけでは年収は上がりにくい。肩書きが変わることで、企業側の評価軸自体が切り替わります。
年収が下がりやすいパターン:
❌ 未経験職種へのチャレンジ転職——「やりたいことをやる」という理由の転職は尊重したいですが、年収は下がることが多くなります。覚悟のうえで戦略を立てる必要があります。
❌ 転職回数が多く、在籍期間が短い——3年以内に3回以上転職している場合、企業は「また辞める」と見なして年収提示を抑えてくることが多い。
❌ 「とにかく今の会社を辞めたい」という焦りドリブンの転職——焦っていると年収交渉を省略してしまいます。精神的な余裕が交渉力に直結します。
年収が上がりやすい転職先には、はっきりした特徴がある
「どこに転職するか」は「どう交渉するか」と同じくらい年収に影響します。年収が上がりやすい転職先には、共通した特徴があります。
業種:外資系・コンサル・IT・金融は年収水準が別格
同じ「営業職」でも、業種によって年収の水準は大きく違います。外資系・コンサル・IT・金融は、ほかの業種より給与水準が高い傾向があります。業種の「天井」の違いは、個人の努力で埋められる差ではないのです。
🌏 外資系・グローバル企業で年収を上げたいなら
外資系やグローバル企業を狙うなら、Samurai Jobのような外資系・ハイクラスに特化したサービスも候補になります。海外駐在など海外で働く求人も扱っています。主な対象は年収700万円以上を目指す30〜40代の管理職・専門職で、今の年収が600万円以上の方が目安です。
企業規模:大手への転職は年収より「福利厚生込みの総報酬」で見る
大手企業は基本給の上がり幅が緩やかに見える一方、住宅手当(月3〜5万円)・退職金制度・確定拠出年金などの「隠れ報酬」が充実しています。長い目で見ると、この差は大きくなります。年収という「点」ではなく、キャリア全体の「線」で考えるのが正解です。
ポジション:「即戦力採用」か「ポテンシャル採用」かで交渉余地が変わる
即戦力として採用される場合、企業は「この人材を獲得するためにいくら払えるか」という視点で年収を決めます。つまり交渉の余地が最大化するのは、企業が「ぜひ来てほしい」と思っているときです。一方、ポテンシャル採用は給与レンジが固定されていることが多く、個別交渉が通りにくい。自分がどちらの文脈で採用されているかを見極めることが、交渉戦略の第一歩です。
年収交渉のベストタイミングは「内定後」——これは絶対に守ってほしい
「面接で年収の話を出すべきか?」という質問は、CA時代によく受けました。答えは明確です。選考中に年収の話を積極的に持ち出すのはリスクでしかない。
なぜ内定後が鉄則なのか——3つの理由
① 企業側の「欲しいスイッチ」が入った状態だから
内定を出すという行為は、企業が「この人に来てほしい」と意思決定した瞬間です。採用担当者の心理は「評価する側」から「口説く側」に切り替わっています。この心理的転換点を使わない手はありません。
② 選考中の年収交渉は「金目当て」と判断されるリスクがある
面接官の本音として、まだ採否が決まっていない段階で年収を前面に出す候補者を「条件ファーストで仕事への意欲が薄い」と見る人は少なくありません。
③ 内定後なら「辞退」という最後のカードがある
交渉には「合意しなければ別の選択肢がある」という状況が必要です。内定後の交渉では「条件次第では辞退する可能性もある」という暗黙のカードが存在し、企業側が真剣に検討せざるを得なくなります。
なお、面接中に「現在の年収を教えてください」と聞かれた場合は正直に答えてOKです。ただし「希望年収は?」と聞かれた際は「御社の規定に従います。もし選考が進んだ際にご相談させていただければ」という返し方が最も安全です。この一文で選考を守りながら、交渉の余地を残せます。
年収交渉で使えるセリフ・絶対NGなセリフ——CA直伝の実践フレーズ
交渉の成否を分けるのは「何を言うか」ではなく「どう言うか」です。同じ内容でも、言い方ひとつで受け取られ方が全く変わります。
✅ 使えるセリフ(成功率が高いフレーム)
【フレーズ①:感謝+根拠+具体的な数字】
「内定のご連絡をいただき、大変光栄です。ぜひ入社させていただきたいと思っております。一点ご相談なのですが、現職での実績(前年比130%の新規開拓実績、チームリーダーとしての3年経験)を踏まえ、ご提示いただいた年収○○万円を△△万円に調整していただくことは可能でしょうか。」
→ ポイント:「感謝→入社意欲の明示→根拠→具体的な希望額」の順番が重要。企業側に「この人は本気で来る気がある、かつ根拠がある」と思わせます。
【フレーズ②:市場価値を根拠にする】
「転職エージェントを通じて複数の企業様からお話をいただいており、他社からのオファーでは○○万円の提示がございます。御社を第一志望として考えておりますので、同水準でのご検討が難しければ、そちらを優先せざるを得ない状況です。」
→ ポイント:他社オファーは実際にある場合のみ使う。虚偽の場合、後で発覚したときのリスクが大きい。「第一志望」という言葉を添えることで角が立ちません。
❌ 絶対NGなセリフ
【NGフレーズ①:理由なき要求】
「年収は最低でも○○万円でないと転職できません。」
→ なぜNG:根拠が一切ない一方的な要求は「この人は自己中心的」という印象を与え、入社前から関係を悪化させます。
【NGフレーズ②:生活事情を持ち出す】
「ローンがあるので、現状より下がると生活が苦しくなります。」
→ なぜNG:企業はあなたのローン事情に責任を持てません。「だから何?」という反応になります。交渉の根拠は常に「あなたの市場価値と実績」であるべきです。
【NGフレーズ③:入社意欲が不明瞭な交渉】
「条件次第では入社を検討します。」
→ なぜNG:「まだ決めていない」という印象を与え、企業側が「では採用を取り消そう」と判断するリスクがあります。入社意欲を明示したうえで交渉するのが鉄則です。
エージェント経由だと年収が上がりやすい——これには構造的な理由がある
「エージェントを使うと年収が上がる」というのは、転職業界の「常識」のように語られますが、なぜそうなるのかを正確に理解している人は少ないです。私自身がCA側にいたからこそ説明できる、構造的な理由があります。
エージェントが年収アップに有利な3つの構造
① エージェントの報酬は内定者の年収に連動する
転職エージェントは、採用企業から「内定した人の年収の30〜35%程度」を成功報酬として受け取るのが一般的です。つまり年収が高いほどエージェントの収益も増えます。エージェントには「できるだけ年収を高く交渉する」という経済的インセンティブが構造的に存在しているのです。自分ひとりで交渉するより、同じ方向を向いたプロが代わりに交渉してくれる状況は有利です。
② 企業の「採用予算上限」を知っている
エージェントは企業と継続的な取引をしているため、ポジションごとの「実際に出せる年収の上限」を把握しています。企業の提示額が上限かどうか、転職者本人には判断できませんが、エージェントには「この企業はここまで伸ばせる」という感覚値があります。ただし、引き上げやすいのは面接での評価が高く、企業が「ぜひ来てほしい」と思っている場合です。
③ 候補者が直接言いにくいことを代弁してくれる
「年収を上げてほしい」と直接企業に言うのは心理的ハードルが高い。エージェントを挟むことで、候補者は入社意欲を保ちつつ、エージェントが「候補者はこちらを第一志望にしておりますが、年収面で他社と比較している状況です」と角を立てずに交渉できます。この「緩衝材」機能は、交渉の成功確率を大きく左右します。
ただし、エージェントにも質の差があります。「とにかく内定を出してほしい」というエージェントは年収交渉を積極的にやらないことがあります。「年収交渉も一緒に取り組んでもらえますか?」と最初に明言しておくことが重要です。
📈 20代・30代前半で、年収の上がるキャリアを考えたいなら
ASSIGN AGENT(アサイン)は、20代〜30代前半の若手ハイクラス層を中心に支援する転職エージェントです。初回の面談では求人を紹介せず、経験と目指したい将来像から逆算したキャリアプランを作ってくれます。目先の年収だけでなく、「次の会社でどんな経験を積めば年収が上がっていくか」まで相談したい人に向いています。
現職年収が低い場合、交渉は詰んでいるのか——突破口は必ずある
「今の年収が低いから、転職しても大して変わらないんじゃないか」という相談をCA時代に何度も受けました。しかしこれは思い込みです。現職年収が低い場合、むしろ年収アップ幅が大きくなるケースが多い。
①「現職年収」を基準にさせない交渉術
企業が内定時に年収を提示するとき、現職年収を参考にして「少し上乗せした額」を出してくることが多い。これが罠です。現職年収が低ければ、その少し上乗せした額も低くなります。
対策は、「市場価値」を基準に設定し直すこと。「同じスキルセットを持つ人材の市場平均が○○万円であるため、それに合わせた設定をお願いしたい」というフレームで話すことで、現職年収という「低い基準点」を無効化できます。
②「なぜ現職年収が低いのか」を先に説明する
現職年収が低い場合、企業は「この人はこの年収が相場の人材なのか?」と思うことがあります。それを先回りして「現職は業界全体の給与水準が低い非上場の中小企業で、担当業務の範囲は年収以上に広い」と伝えておくと、現職年収に引きずられた提示を避けやすくなります。
③ 他社の選考状況を交渉材料にする
冒頭でもお伝えしたとおり、交渉の成否を大きく左右するのが「他社と競り合っているか」です。複数の企業の選考を並行して進めていると、「他社からも評価されている人材」として交渉しやすくなります。他社で内定や高い提示額が出ている場合は、エージェント経由で正直に伝えましょう。ただし、事実と違う金額を伝えるのは絶対に避けてください。
現職年収が低いことは、転職で年収を上げられない理由にはなりません。市場価値を基準に交渉し、年収が上がりやすい業界・職種を選べば、大きく上げることも十分に可能です。
📌 この記事のまとめ
- 転職で年収が上がりやすいのは、成長業界への転職や、自分のスキルが高く評価される職種への移動
- 年収交渉は内定後に、市場価値を根拠にして行う。エージェント経由なら角を立てずに交渉できる
- 現職年収が低くても、低い理由を先に説明し、市場価値を基準に交渉すれば大きく上げられる
年収アップを狙うならこの3つ
年収交渉で結果を出すには、企業の給与レンジを把握して交渉を代行してくれるエージェントを味方につけるのが近道です。
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