※本記事は元転職エージェント(キャリアアドバイザー歴4年)の経験をもとに執筆しています。
転職エージェントとして4年間、のべ1,200名以上の転職希望者と初回面談をしてきた。その経験の中で、はっきり言えることがある。「準備なしで来た人の9割は、面談で損をしている」。
ある日、30代前半のIT系営業マンが初回面談にやってきた。転職理由を聞くと「なんとなく今の会社に将来性を感じなくて…」。希望年収は?「今より上がればいいです」。希望職種は?「営業以外でもいいし、営業でもいいです」。面談は1時間の予定だったが、30分も経たないうちに会話が止まった。私は紹介できる求人の絞り込みができず、結局その日は「一度ゆっくり考えてみてください」という言葉で終わった。
これは特別なケースではない。私が担当した初回面談のうち、約60%はこのパターンだった。準備不足で来ることで何が起きるかというと、キャリアアドバイザーが「あなたに何を提案すればいいか分からない」状態になる。結果として、紹介される求人が的外れになり、貴重な転職活動の初速が落ちる。
転職エージェントは「相談してから方向性を決める場所」ではない。正確には「ある程度の方向性を持って相談することで、初めてプロの力が最大化される場所」だ。登録前の準備が、その後の転職活動の質を決める。
登録前に決めておくべき4項目:これがないとCAは動けない
エージェントに登録するとき、多くの人が「登録すれば担当者が全部考えてくれる」と思っている。違う。キャリアアドバイザーが最初にすることは、あなたの希望条件を軸に求人データベースを絞り込むことだ。絞り込む軸がなければ、何千件もある求人から「なんとなくよさそうなもの」を提案するしかなくなる。
登録前に最低限決めておくべき4項目を挙げる。
①希望職種(2〜3つに絞る)
「なんでもいい」は一番困る回答だ。理由は単純で、「なんでもいい人」に合う求人は存在しないからだ。求人票は必ずポジションが決まっている。「営業職・法人向け」「マーケティング・デジタル領域」など、最低限の方向性を2〜3つ持っておくこと。完璧な答えでなくていい。「今の仕事の何が好きで、何が嫌いか」を言語化するだけで、職種は絞れる。
②希望年収(最低ラインと理想ライン)
「今より上がれば」という回答は、CAにとって何の情報にもならない。現在の年収が分からなければ「今より上」が何円なのか不明だからだ。「最低でも○○万円、できれば○○万円」という2段階で考える。最低ラインは生活費から逆算して設定すること。理想ラインは現在の年収+10〜20%が現実的な目安になる。いきなり50%増を希望すると、紹介できる求人が激減する。
③転職時期(いつまでに転職したいか)
「急いでいない」「いい求人があれば」という回答が来ると、CAは優先度を下げる。CAには複数の担当者がいて、緊急度の高い人から対応するのが現実だ。3ヶ月以内・6ヶ月以内・1年以内など、おおよその時期を決めておく。決められない場合は、現職の何かが改善されたら残留するのか、それとも時期に関係なく転職するつもりなのかを自分に問うといい。
④希望エリア(勤務地)
リモートワーク可能な求人が増えたとはいえ、フルリモートの求人はまだ全体の15〜20%程度(2024年時点)だ。「どこでもいい」と言うと、全国の求人が候補になり、絞り込みが機能しない。転勤可能かどうか、引越しは許容できるかどうかも含めて決めておく。
失敗事例:「エリアはどこでも」と答えた結果、北海道・九州・関東の求人が混在した提案書が届き、比較ができなくなったケースがある。絞り込めていないと、選ぶ側も疲弊する。
職務経歴書は先に作っておくべきか?:CA目線の正直な答え
結論から言う。完成度70%のもので構わないので、作ってから登録したほうがいい。理由は2つある。
理由①:CAが求人提案の精度を上げられる
職務経歴書があると、あなたの経験・スキル・実績が一目で分かる。「前職で予算達成率120%を3年連続で達成した営業マン」と「営業経験5年の人」では、紹介できる求人の質が変わる。実績の数字が書かれているだけで、提案できる求人の選択肢が1.5〜2倍に広がる。
理由②:自分の市場価値を客観視できる
職務経歴書を書く作業は、自分のキャリアを棚卸しする作業でもある。書いてみると「意外と実績がある」または「思ったより書くことがない」という気づきが生まれる。この気づきが、希望年収や職種の設定を現実的にする。
一方で、「完璧な職務経歴書ができてから登録しよう」と考えると、永遠に登録できない。完璧を目指して2週間かかるより、7割の完成度で登録して面談後にブラッシュアップするほうが時間効率が高い。
登録前に作っておくべき最低限の職務経歴書の要素:
- 会社名・在籍期間・雇用形態(時系列で整理するだけでOK)
- 担当業務の概要(箇条書き3〜5行で十分)
- 数字で表せる実績(売上・件数・改善率など。1つでもあると印象が変わる)
- 使用ツール・資格(IT系ツールや業界特有の資格は必ず記載)
よくある失敗:業務内容しか書かれておらず、実績が一切ない職務経歴書を持参した人がいた。「成果を出したことはありますか?」と聞くと「ありますが書いていませんでした」。その場で追記してもらったが、面談時間の30分が書類作業で消えた。
登録フォームで正直に書くべきこと・盛らなくていいこと
転職エージェントの登録フォームを前にして、「少し盛って書いたほうが良い求人を紹介してもらえるのでは?」と考える人がいる。答えは明確だ。盛ることにメリットはなく、後で問題になるだけだ。
正直に書くべき項目
- 現在の年収:盛ると、後の書類選考や内定後の年収交渉で実態と乖離が生まれ、最終的に自分が損をする。CAは年収の証拠書類(源泉徴収票)を企業に提出するよう求められることもある。
- 在職・離職の状況:「在職中」と偽ると面接日程の調整方針が変わり、後でトラブルになる。離職中なら離職中と書くこと。CAは離職中であることをネガティブに見ない。むしろ調整がしやすくなる。
- 転職回数:データ上の転職回数は企業への推薦書に記載される。隠せない情報だ。転職回数が多い場合は、それぞれの理由を論理的に説明できるよう準備するほうが有効。
- 健康状態・休職歴:面接で発覚すると選考に悪影響が出る。エージェントに正直に伝えれば、理解のある企業に絞って紹介してもらうことができる。
盛らなくていい(むしろ盛ってはいけない)項目
- 語学力:TOEIC800点と書いて実際には600点だと、英語必須の求人に誤って推薦されてしまう。スコアは正確に。
- マネジメント経験:「5名のチームを管理」が実態として「新人の後輩に仕事を教えた程度」なら、マネジメント枠の求人は合わない。
- 退職理由:「キャリアアップのため」という建前だけでなく、本当の理由(人間関係・給与・残業)も率直に話す。本音を言うことで、同じ問題が起きにくい企業を選んでもらえる。
初回面談で必ず聞かれる10の質問と準備
初回面談でCAが聞くことは、どのエージェントでもほぼ共通している。以下の10問を事前に頭の中で整理しておくだけで、面談の密度が格段に上がる。
CAからのアドバイス:質問10「転職で何を一番大切にしているか」への回答が最も面談の方向性を決める。「何でも大事」という答えは全てが中途半端な提案につながる。本当の優先順位1位を言語化しておくこと。
登録後24時間以内にやること:出遅れると機会を逃す
転職エージェントに登録した後、多くの人は「あとは連絡を待てばいい」と考える。これが大きな機会損失につながる。エージェント内部では、登録直後が最も担当者の関心度が高い時間帯だ。登録から24時間以内に動くことで、対応の優先度が変わる。
① 面談日程の確定を最優先にする
登録後に届くメールには面談日程の確認が含まれている。これを放置すると、担当CAのスケジュールが埋まり、面談が1〜2週間後になる。登録当日または翌日中に返信すること。早く返信した人から良い時間帯が埋まる。
② 職務経歴書をアップロードする
多くのエージェントサービスには書類アップロード機能がある。面談前に職務経歴書を送付しておくと、CAが事前に読み込んで面談の質が上がる。面談当日に初めて渡すより、事前共有のほうが時間を有効に使える。
③ プロフィールを80%以上埋める
登録フォームを途中で提出した場合、マイページに未記入項目が残っていることがある。プロフィールの充足率が低いと、システムによるマッチング精度が下がる。資格・スキル・学歴の詳細など、入力できる欄は全て埋めておく。
④ 気になる求人にブックマークをつける
登録後すぐに求人一覧が閲覧できるようになる。全部読まなくていいが、面談前に10件程度ブックマークしておくと「この求人が気になった理由は?」という面談の話題になり、希望条件の解像度が上がる。
失敗事例:登録後に1週間音沙汰がないと感じたBさん。マイページを確認したら、面談日程の確認メールが迷惑メールフォルダに入っていた。1週間後に気づいて返信したが、最初に担当する予定だったCAのスケジュールが埋まり、経験の浅い担当者にアサインされたというケースがある。登録後は受信フォルダ・迷惑メールフォルダを必ず確認すること。
複数登録する場合のスケジュール管理:同時進行で自滅しないために
転職エージェントを複数使うことは有効な戦略だ。各社で保有する求人が異なるため、1社だけに絞ると選択肢が狭まる。ただし、同時に3社以上に登録すると管理が破綻するケースが多い。
私がCAをしていた頃、複数エージェントに同時登録している転職者から「A社でもB社でも同じ求人を紹介された。どちらから応募すればいいか」という相談を何度も受けた。これは同時登録の代表的なトラブルだ。同じ企業に複数のエージェントから応募が届くと、企業から信頼を失うリスクがある。
複数登録を成功させるルール
【エージェント数は2〜3社が上限】
3社を超えると、それぞれの面談・書類送付・選考進捗の管理が手に負えなくなる。質が落ちるくらいなら絞ったほうがいい。まず2社で始めて、1社が機能していないと感じたら入れ替える形が現実的だ。
【スプレッドシートで一元管理する】
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