※この記事は元転職エージェント(キャリアアドバイザー歴4年)の実体験をもとに執筆しています。
転職エージェントとして4年間で約1,200人の面談を担当した。その経験の中で、内定率に明確な差が出る「ある共通点」に気づいた。
内定率が高い人は、初回面談で「全部話す人」だった。
逆に、なかなか内定が出ない人に多かったパターンがある。今でも鮮明に覚えているのが、IT系企業の営業職から転職を希望していた28歳の男性Aさんのケースだ。最初の面談では「なんでもいいです」「年収は今より上がれば」「職種も特にこだわりはなくて」と答えるばかりだった。結果、私が紹介できる求人の選定に2週間以上かかり、最終的にAさんが内定を獲得するまで4ヶ月かかった。
同じ時期に面談した別の方——30歳女性のBさん——は、初回から「現職の年収は430万円、残業は月40時間、転職理由は管理職へのキャリアパスが見えないこと、希望年収は最低480万円、入社時期は3ヶ月後まで、リモート週3は必須」と明確に話してくれた。Bさんの内定獲得までの期間は38日間。しかも第一希望の会社から年収520万円のオファーだった。
この差はスキルでも経歴でもなく、「面談で何を話したか」だけで生まれた。転職エージェントの面談を「選考」だと思っている人が多いが、実際は違う。面談はあなたの転職を成功させるための「情報収集の場」であり、あなたが情報を出せば出すほど、エージェント側は精度の高いサポートができる。この記事では、元エージェントとして「こう話してくれると本当に助かる」という観点から、面談で話すべきことを余すところなく伝える。
この記事でわかること
- 転職エージェントが初回面談で本当に知りたい情報
- 必ず伝えるべき5つの項目と具体的な伝え方
- 「お任せします」が逆効果になる理由と対処法
- 希望年収の正しい伝え方(高め・正直どちらが正解か)
- 面談後の行動で変わる求人紹介のスピードと質
初回面談でCAが本当に知りたいのは「あなたの本音」だ
初回面談の時間は平均60〜90分。この時間にキャリアアドバイザー(CA)がやっていることは大きく3つある。
① あなたのスペック確認(経歴・スキル・実績)
② あなたの転職軸の把握(何のために転職するのか)
③ 紹介可能な求人のマッチング精度の測定
特に重要なのが②だ。「なぜ転職したいのか」「今の仕事の何が嫌なのか」「次の会社でどうなりたいのか」——これがわからないと、CAはあなたに合った求人を絞り込めない。私が担当していたとき、1回の面談で転職軸が明確になった人には平均3〜5社の精度の高い求人を翌日中に紹介できていた。一方、転職軸が曖昧なまま面談が終わった人には、「とりあえず条件が合いそうな求人」を10社以上送ることになり、結局どれも「なんか違う」となるパターンが多かった。
面談の流れは概ね以下のとおりだ。
- 自己紹介・アイスブレイク(5〜10分):緊張をほぐす時間。ここで自分を「よく見せよう」とする必要は一切ない
- 職務経歴の確認(20〜30分):履歴書・職務経歴書に沿って現職・前職の詳細を確認
- 転職理由・転職軸のヒアリング(15〜20分):最も重要なパート。ここで本音を話せるかどうかが分岐点
- 希望条件のすり合わせ(10〜15分):年収・勤務地・職種・社風など
- 今後の流れの説明(5〜10分):求人紹介のタイミングや選考サポートの方法など
注意してほしいのは、面談はあなたを評価する場ではないという点だ。CAはあなたの味方であり、あなたの転職を成功させることが仕事だ。だから「こんなこと言ったら悪く思われるかな」という遠慮は不要。むしろ本音を隠すほど、サポートの精度が落ちる。
必ず伝えるべき5項目——これを話せばCAのギアが一段上がる
1,200人以上の面談を通じて、これを話してもらえた人は圧倒的に転職の質とスピードが上がる、という5項目がある。
① 現職の詳細情報(数字で語る)
「営業をしています」ではなく、「法人向け SaaS の新規開拓営業で、月の平均商談数は15〜20件、昨年度の達成率は123%、チームは6人で私はリーダーポジションです」という粒度で話すことが理想的だ。
- 現職の年収(額面・手取り・賞与の内訳)——理由:求人紹介の年収帯を決める最重要指標。「だいたい450万くらい」ではなく「基本給28万、固定残業代3万込み、賞与年2回で計80万、合計416万」という正確な数字が必要
- 実際の残業時間・働き方——理由:「残業少なめ希望」という漠然とした希望に対して、現状との比較でリアルな改善幅を把握するため。「月45時間残業している人が20時間に減らしたい」と「月10時間の人が0にしたい」では紹介できる求人が全く変わる
- 職場での立ち位置・評価——理由:「会社では評価されていない」という情報は、書類通過率を上げるための職務経歴書の書き方に直結する。自己評価が低い人ほど、CAが強みを引き出す質問をしやすくなる
② 転職軸(なぜ転職したいのか・何を変えたいのか)
転職軸は「会社を辞めたい理由」と「次の会社でこうなりたいという理想」の両方を伝えることが大切だ。片方だけでは不完全。
- ネガティブな転職理由も正直に話す——理由:「人間関係が理由です」と言うことへの抵抗感がある人は多いが、それを隠すと同じ環境の会社を紹介される可能性が高くなる。CAは転職理由を面接官に伝えるわけではないので、社内の人間関係問題や上司との衝突も包み隠さず話してほしい
- 転職で優先する順位をつける——理由:「年収も上げたいし、残業も減らしたいし、スキルアップもしたい」という人は多いが、全部を同時に叶える求人はほぼ存在しない。「年収>残業時間>職種の幅」のように優先順位を決めると、求人の絞り込みが格段に楽になる
③ 希望条件(絶対条件とあれば嬉しい条件を分ける)
希望条件は「MUST条件」と「WANT条件」に分けて伝えることが非常に重要だ。
- MUST条件(これが満たされないなら受けない)——勤務地、雇用形態、年収の下限、特定のスキルが活かせる職種など。MUST条件が多すぎると求人がゼロになる可能性があるため、3〜5項目程度に絞ることを意識する
- WANT条件(あれば嬉しい程度のもの)——フレックス制度、リモートワーク可否、社員食堂の有無、研修制度など。CAはこれをもとに複数の「似たような求人」の中から最適解を選ぶ
④ 転職希望時期(いつまでに入社したいか)
「急いでいない」「いい会社があれば」という答えは、CAにとって最も動きにくい答えの一つだ。
- 具体的な入社希望時期を月単位で伝える——理由:求人によって選考スピードが異なる。「3ヶ月以内に入社したい」なら内定まで最短で動ける企業を優先的に紹介できるし、「半年後でいい」なら倍率が高くても選考期間が長い人気企業を狙える。時期が不明確だと、どちらの戦略も取れない
- 現職の退職プロセスにかかる時間も共有する——理由:引継ぎ期間や有給消化の期間によって、実質の最短入社可能日が変わる。「内定をもらっても3ヶ月は現職を続ける必要がある」という制約は、オファー交渉の際にも影響する
⑤ 制約条件(ライフイベント・家族の事情・健康面)
これを話すことに抵抗がある人は多いが、実はCAが最も「知っておきたい」情報でもある。
- 近い将来の結婚・出産・育児の予定——理由:産育休の取得実績がない会社を紹介してしまうリスクを防ぐため。差別的な意図は一切なく、純粋にミスマッチを防ぐための情報として活用される
- 介護や親の事情による転居不可などの制約——理由:転勤がある求人を除外するだけでなく、緊急時に柔軟な対応ができる社風の会社を優先的に選ぶことができる
- 持病や通院の必要性——理由:健康面の配慮が必要な場合、残業ゼロ・フレックス必須という条件をMUST化する根拠になる。言いにくい情報だからこそ、最初に伝えておくと後の調整がスムーズになる
「なんでもいい」「お任せします」がCAの手を縛る理由
転職エージェントに来る人の約40%が、初回面談で「お任せします」と言う——これは私が実際に面談データを集計したときの体感値だ。その言葉の裏にある心理は大体3つだ。
① プロに任せれば最善の選択肢を出してくれると思っている
② 自分の希望を言うと選択肢が狭まると思っている
③ 何を希望すればいいか自分でもわかっていない
①と②は完全な誤解だ。CAはあなたの人生のすべてを知っているわけではない。あなたのライフスタイル、家族構成、日々のストレスの種類、将来のビジョン——これらを知らずに「最善の求人」を選ぶことは不可能だ。「お任せします」と言われたとき、CAは「この人に合う求人」ではなく、「条件が表面上合う求人」を機械的に選ぶしかなくなる。
実際に起きた失敗事例を一つ紹介する。
【失敗事例】「お任せします」で内定辞退が連続した32歳男性のケース
Cさんは「スキルアップがしたい」以外の希望を一切言わなかった。私は技術的な成長機会がある求人を3社紹介し、すべてから内定をもらった。しかしCさんは3社すべてを辞退。理由を聞くと「通勤時間が2時間になる」「子供が小学校に上がるタイミングで転校させたくない」「妻が今の住まいから離れたくないと言っている」という情報が次々と出てきた。最初から言ってくれれば、勤務地の制約を考慮した求人を最初から紹介できていた。Cさんの転職活動はこの時点で3ヶ月が経過していた。
③の「何を希望すればいいかわからない」という状態は、むしろ面談で解決すべき本質的な問題だ。「まだ転職軸が定まっていない」という状態そのものをCAに伝えれば、軸を作るためのヒアリングをしてくれる。「軸がないから何も言えない」ではなく、「軸がないこと」を言葉にして伝えることが出発点になる。
希望年収は「高め」に言うべきか「正直」に言うべきか——元CAが出す答え
これは転職活動中の人が最もよく悩む問いの一つだ。結論から言う。
CAには正直に、求人応募時には上限ギリギリまで高く
面談でCAに伝える希望年収は、正直な数字を伝えるべきだ。なぜかというと、CAに伝える数字は「求人絞り込みの基準」として使われるだけで、企業に直接伝わるわけではないからだ。ここで背伸びした数字を言っても、自分のスペックに見合わない求人を大量に紹介されるだけで、書類選考でほぼ全落ちするという最悪の結果になる。
ただし、「正直に伝える」というのは、現職の年収をそのまま言うことではない。以下の3つの軸で考えるとよい。
年収の伝え方の3軸
- 現職の年収(正確に):基本給+各種手当+賞与を合算した額面年収
- 最低希望年収(下限):これ以下なら転職しないという絶対ラインを数字で明示する
- 理想年収(上限):市場価値を調べたうえで「達成できたら嬉しい」という目標値
「年収は今より上がれば」という言い方は、CAが最も困る伝え方の一つだ。現職400万の人が「上がれば」と言う場合、401万でも満足なのか、500万以上じゃないとだめなのかが全くわからない。この曖昧さが、ミスマッチな求人紹介につながる。
一方、求人に応募する際のレジュメや面接での希望年収の伝え方は別の話だ。ここでは若干高めの数字を提示することが有効なケースがある。企業側は提示した金額を下回るオファーを出すことが多いため、交渉の余地を作る意味で、自分の許容できる下限より10〜15%程度高い数字を最初に提示するという戦略は一定の合理性がある。
ただし、根拠のない高額提示は逆効果だ。「〇〇のスキルで同業他社の相場が△△万円だから」という根拠を持って話せる場合に限り有効な手法だということを覚えておいてほしい。
面談後48時間が転職の質を決める——フォローアップでやるべきこと
面談が終わったあと、多くの人が「あとは求人が来るのを待てばいい」と思っている。これは大きな機会損失だ。
CAは同時に数十〜数百人の候補者を担当している。面談直後に「優先的に動くべき人」かどうかの印象はかなりの部分で「面談後のレスポンス」によって決まる。私自身も担当者として、面談後24時間以内にフォローの連絡をくれた人のファイルは思わず最初に開いていた。
面談後24〜48時間以内にやること
- 面談中に言いそびれた情報をメールで補足する——理由:面談はリアルタイムでの会話なので、緊張や流れの中で伝えられなかったことが必ず出てくる。「転職時期について改めて考えたら〇月が現実的です」「副業の制限が現職にあることを言い忘れました」など、小さなことでも追加連絡することでCAの情報精度が上がる
- 面談で話した内容の認識ズレを確認する——理由:特に転職軸と希望条件については、CAの理解と自分の意図がズレていることがある。「先日の面談でお話した希望条件について、優先順位を改めて整理しました」という一文で、CAとの認識合わせができる
- 職務経歴書を提出または更新する——理由:書類の質が求人紹介の精度に直結する。面談でCAから指摘された点があればすぐに修正し、24時間以内に送ることで「動きが早い=本気度が高い」という印象を与えられる
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